お盆行事の中核をなすのが、先祖の霊を迎え、共に過ごし、再び見送る一連の儀礼です。形式的な作業として済ませるのではなく、それぞれの行為に込められた意味を把握しておくことで、供養の深みは大きく増します。
迎え火と送り火を行うベストな時間帯と作法
ご先祖様の魂が迷わず我が家へ帰ってこられるよう目印として焚くのが「迎え火」、滞在を終えてあの世へ戻られるのを見送るのが「送り火」です。
- 迎え火:8月13日(木)の夕方(17:00~19:00頃)
日暮れ時に自宅の玄関先や門口、庭先で行います。素焼きの皿(焙烙=ほうろく)の上に、皮を剥いだ麻の茎である「オガラ(麻幹)」を折って井桁(いげた)状に積み、マッチやライターで点火して合掌します。オガラの清らかな煙に乗って先祖が降り立つと信じられています。 - 送り火:8月16日(日)の夕方(17:00~19:00頃)
迎え火と同じ場所で、再びオガラを焚いて見送ります。京都の「五山送り火」や長崎の「精霊流し」も、この送り火の大規模な地域的発展形に他なりません。
現代の集合住宅(マンション・アパート等)では、ベランダや共用廊下での火気使用が管理規約で禁止されているケースが大半です。その場合は無理に火を焚かず、「盆提灯」の電球の明かりを灯すことで迎え火・送り火の代用とすることが現代仏事の公認ルールとなっています。
精霊馬(きゅうり・なす)の意味と現代の作り方
お盆の祭壇(盆棚・精霊棚)に供える最も象徴的な飾りが、野菜で作る「精霊馬(しょうりょううま)」です。
- きゅうりの馬:足の速い馬に見立て、「先祖の霊が一刻も早くあの世から我が家へ戻ってこられるように」という願いが込められています。
- なすの牛:歩みの遅い牛に見立て、「名残惜しいこの世から、景色を眺めながらゆっくりと気をつけて帰ってほしい」「供えられたたくさんの荷物を牛の背に乗せて持ち帰ってほしい」という慈しみの心が託されています。
作り方はシンプルです。少し湾曲した新鮮なきゅうりと丸みのあるなすを選び、割り箸や爪楊枝を適度な長さに折って4本の脚として斜めに刺し込み、自立させます。飾る向きは、8月13日~15日は頭を家(内側・仏壇)に向け、16日になったら頭を外(玄関・外側)に向けて配置するのが本来の習わしです。
盆提灯はいつから飾る?初盆の白提灯と処分方法
盆提灯は、先祖の霊が迷わず自宅に辿り着くための誘導灯であり、故人への感謝と敬意を可視化した供養具です。飾る時期は8月に入ってすぐ(8月1日頃)、遅くとも盆入りの前日(8月12日)までに仏壇や盆棚の両脇へ設置するのが通例です。
特に配慮が必要なのが「初盆(新盆)」です。初めて里帰りする故人の魂が迷わないよう、絵柄の入った通常の提灯ではなく、「白紋天(しろもんてん)」と呼ばれる無地で白木の提灯を1つだけ用意し、玄関や仏間の窓辺に吊るします。
白提灯は初盆の1回限りしか使用しません。役目を終えた提灯の処分については、かつては送り火の炎で燃やす風習がありましたが、現代の住宅環境では困難です。現在推奨されている処分方法は以下の2通りです。
- 菩提寺へ持ち込みお焚き上げ:寺院の施餓鬼会(せがきえ)や納札所でお焚き上げ供養を依頼する。
- 家庭内での丁寧な処分:提灯の火袋(白い和紙部分)にほんの少しハサミを入れて使用不能の状態にし、白い紙や半紙に包み、清めの塩を振って感謝を込めて一般可燃ごみとして処分する。
なお、親族や知人からいただいた柄物の絵柄提灯は、毎年繰り返し大切に飾るもののため、破棄せず防虫剤を入れて箱にしまい保管します。
お盆のお供え物・のし(熨斗)の表書きと相場
お盆の時期に実家や親族宅を訪問する際、あるいは郵送で供養の意を伝える際、欠かせないのが「御供(おそなえ)」の進物です。
- のし紙の表書き:水引は黒白または黄白の結び切り(関西圏では黄白が主流)。上段中央に「御供」または「御仏前」と墨で濃く記します。初盆の訪問であれば「新盆御見舞」とするのも丁寧です。下段には施主ではなく差出人のフルネームを記載します。
- お供え物の適正相場:一般的な親族への進物は3,000円~5,000円程度が標準的です。菓子折り(日持ちのする水羊羹・ゼリー・焼き菓子)、旬の果物(梨・桃・ぶどうなど)、線香・ろうそくのセットが定番とされます。
- 初盆法要の香典(現金):近親者であれば10,000円~30,000円、知人・友人の関係であれば5,000円~10,000円が相場となります。法要後に会席(食事)が振る舞われる場合は、その実費分(5,000円~10,000円程度)を上乗せして包むのが大人の嗜みです。