ネット上のコミュニティでいまなお「子どもの頃に見てトラウマになった」と語り継がれる背景には、CG技術と特殊メイクを駆使して原爆の地獄絵図を容赦なく再現した制作陣の凄まじい執念がありました。
特に視聴者の脳裏に焼き付いているのが、前編終盤における原子爆弾投下の瞬間から家屋倒壊のシークエンスです。ピカッと光った瞬間、爆風によってガラス片が全身に突き刺さる人々、熱線によって一瞬で炭化する通行人、そして倒壊した自宅の下敷きになった父・大吉(中井貴一)と姉の英子、弟の進次が生きたまま猛火に包まれていく場面です。「ゲン、逃げろ!わしらの分まで生きるんじゃ!」と叫ぶ父の手を握りしめながら、火の粉が迫るなか母・君江(石田ゆり子)に引きずられるようにしてその場を離れるゲンの慟哭は、多くの茶の間に底知れぬ恐怖と悲劇を刻み込みました。
さらに後編では、被爆直後の広島の街に漂う死臭、ハエが飛び交い傷口に無数のウジ虫が這い回るリアルな描写、被爆者の血液の混じった黒い雨を飲むシーンなどが一切のオブラートに包まれることなく描かれました。当時の制作発表において演出陣は「凄惨だからといって美化したり省略したりすれば、戦争の本質を見失う。中沢啓治先生が漫画を通じて訴え続けた怒りを、生身の人間の肉体を通して突きつける義務がある」と熱く語っていました。この妥協なきリアリズムこそが、視聴者に「トラウマ」と呼ばれるほどの圧倒的な衝撃を与えた根源でした。