SNSのフィードで視聴者の目を奪う「一回転100万回」というフレーズは、突如として自然発生したわけではない。元ネタをたどると、物理演算シミュレーター(AlgodooやUnity、Blenderなどの物理エンジン)を駆使した実験系クリエイターたちの「もしもシリーズ」に行き着く。ある歯車を1回転させたとき、ギア比の連鎖によって最後の歯車が100万回転するという極端な増速ギアのシステムを仮想空間内に構築した検証動画がすべての起点となった。
動画内では、ハンドルをゆっくりと半回転させた瞬間に、末端のパーツが物理演算の限界を超えて目に見えない超光速のような挙動を示し、ポリゴンが引き裂かれ、画面外へ吹き飛ぶ。この「静けさから一瞬で訪れる理不尽なカタストロフィ」が、15秒から30秒の短尺動画フォーマットに完璧に合致した。タイムラインを流し見していたユーザーの手を止めさせ、「え、今何が起きた?」「物理エンジンがバグって異次元に消えた」といった驚愕の声が殺到したのである。
ネット上では一時、「現実の研究機関がギネス記録のために作った超精密マシンなのではないか」「本物の機械を回したら時空が歪むのではないか」といったセンセーショナルな噂まで飛び交った。しかし、取材と検証を進めると、その真相は現実の機械ではなく「物理演算プログラムの処理限界(浮動小数点数のオーバーフローや衝突判定の破綻)を楽しむデジタル検証」であることが判明している。現実の物理法則を模倣するはずのシミュレーターが、極限の数値を叩き込まれた結果として神話のような壊れ方を見せる――この視覚的カタルシスこそが、世界的バズの根本的な火種となった。