新幹線や高速バスを乗り継いででも、その土地固有の味を求める人々が増えている。いわゆるフードツーリズムの目的地として、大衆食堂が堂々たる主役に躍り出たのだ。高級料亭のコース料理ではなく、庶民の日常に溶け込んだB級グルメこそが、その土地の風土や文化を最もダイレクトに伝えてくれると旅人たちは知っている。
盆の上に鎮座するメインのおかず、ツヤツヤの白飯、出汁の効いた味噌汁、そして素朴な漬物。この「定食」という完結した小宇宙には、日本人が培ってきた食事の黄金比が凝縮されている。甘味、塩味、酸味、そして旨味。三角食べを繰り返す中で生まれる味覚のリズムは、どんな贅沢な一品料理にも代えがたい精神的な充足感をもたらす。