多動症(ADHD)と自閉症(ASD)は、どちらも生まれつきの脳機能の偏りによって生じる発達障害ですが、表面化する行動の動機には明確な違いが存在します。
ADHDに見られる多動は、脳内のドーパミンなどの神経伝達物質の働きが関与しており、「衝動性や好奇心を抑えきれずに新しい刺激を求めて動いてしまう」ことが主な要因です。興味が次々と移り変わり、思いついたら身体が先に動いてしまうため、静止することが苦痛に感じられます。
一方、自閉スペクトラム症に見られる多動は、「見通しの立たない不安」や「五感への過剰な刺激(感覚過敏)」を回避・解消しようとする防衛反応として現れる傾向があります。予定外の出来事や騒がしい環境に強いパニックを覚え、自らを落ち着かせるために歩き回ったり、同じ動作を繰り返したりします。外見上は同じ「落ち着きがない状態」に見えても、内面で起きている心理的・感覚的メカニズムは大きく異なります。