テレビドラマ版の鮮烈なラストシーンと、柴門ふみの原作結末には決定的な乖離が存在します。ドラマ版では、別れから3年後の表参道で偶然再会した二人が描かれます。結婚した完治とさとみを前に、リカは晴れやかな笑顔で「カンチ!」と呼び止め、連絡先を交換することなく「じゃあね」と人混みの中へ颯爽と消えていきました。この爽やかな旅立ちこそが視聴者の涙を誘った名シーンです。
しかし、漫画雑誌『ビッグコミックスピリッツ』に連載された原作のリアリズムは、はるかに過酷で生々しいものでした。原作のリカは、完治との関係に破れた後、かつての上司であり不倫関係にあった和賀の子供を身ごもり、誰にも頼らず未婚の母として生きる道を選びます。完治への未練を抱えながらも、誰かの所有物になることを拒否し、自らの足で立つことを選ぶという、極めてハードボイルドな幕引きでした。
さらに注目すべきは、連載終了から25年を経て2016年に発表された続編『東京ラブストーリー 〜After 25 years〜』で描かれた赤名リカとその後の人生です。50代を迎えたリカは、アフリカや中東など世界各地を飛び回るキャリアを築き、一人息子のアフリカ(華一)を立派に育て上げていました。息子の結婚相手が偶然にも完治とさとみの娘だったことから運命の再会を果たすのですが、白髪交じりになってもなお、リカは自分の生き方に一片の悔いも持たず、堂々たる威厳を放っていました。彼女の人生は、男に選ばれることで完結する旧来の幸福論を真っ向から否定し続けた軌跡だったといえます。