干し芋の表面が真っ白に粉をふいているのを見ると、一見して有害なカビが生えてしまったかのように錯覚しがちだ。しかし、その白い粉の正体は、大半のケースにおいてサツマイモ内部に含まれる麦芽糖(マルトース)が表面に浮き出て結晶化したものである。
干し芋の製造過程において、蒸し上げられたサツマイモのデンプンは酵素(β-アミラーゼ)の働きによって麦芽糖へと糖化される。その後、乾燥工程を経て水分が抜けていく過程で、内部の糖分が水分とともに表面へと移行し、水分だけが蒸発することで糖分が白く固まる。この現象は干し柿の表面に付く白い粉(柿霜)と全く同じ原理であり、昔から「粉がふいた干し芋ほど甘くて上質」と珍重されてきた歴史がある。
では、消費者を悩ませる「安全な糖分」と「危険な白カビ」は、具体的にどこで見分ければよいのか。現場の鑑定基準として用いられる識別ポイントは以下の通りだ。
最も分かりやすい指標は、表面の質感と均一性にある。糖分の結晶は、芋の表面全体に薄く均一に、まるで微細なパウダーをはたいたように広がる。指で触れるとサラサラとしており、押しつぶしても平坦なままだ。一方、白カビは空気中の浮遊菌が付着した箇所からコロニーを形成するため、ポツポツとした「丸い斑点状」に発生し、綿毛のようにふわふわとした立体的な厚み(菌糸)を持つ。
さらに、決定打となるのが匂いと熱に対する反応である。糖分結晶であればサツマイモ特有の甘く香ばしい香りが漂うが、白カビが発生している場合は特有のツンとする埃っぽさや土臭い「カビ臭」を放つ。また、少しちぎってオーブントースターや電子レンジで軽く温めた際、糖分であれば熱で溶けて透明になり表面がツヤを帯びるのに対し、カビの菌糸は熱を加えても溶けることはなく白く焦げ付くだけだ。この熱反応を確認すれば、ルーペや顕微鏡がなくとも家庭で確実に鑑別できる。