仮声帯は不随意筋に近い性質を持ち、腕や指のように「この筋肉を動かす」と意識して収縮させることが困難です。そのため、日常的な動作や既存の発声技術を経由して間接的に神経伝達を呼び起こすがなり声の練習方法が極めて有効です。安全に感覚を掴むための3段階アプローチを順に解説します。
ステップ1:ため息と咳払いから「仮声帯の位置」を捉える
最も手軽に仮声帯を関与させるきっかけは、重い荷物を持ち上げた瞬間の「ウッ」という息止めや、喉の奥を軽く鳴らす咳払いです。深いため息をつきながら、胸の奥から「ハァー」と息を吐き出し、その途中でわざと喉の奥を狭めて「ガラガラ」とした低音のノイズを混ぜていきます。このとき、首周りや顎に強い力みが生じていないこと、喉にチクチクした鋭い痛みが走らないことを細かく確認してください。痛みがある場合は真声帯が衝突している証拠であるため、即座に中断が必要です。
ステップ2:エッジボイスからのアプローチで閉鎖感を制御する
ホラー映画の効果音のような「ブツブツ」という途切れた音を出す「エッジボイス(ボーカルフライ)」は、声帯コントロールの基本です。声帯が最小限の呼気でリラックスして閉じている状態から、徐々に息のスピード(呼気圧)を上げていきます。エッジボイスからのアプローチを深めると、声帯の振動数が上がると同時に、その周辺組織である仮声帯が気流に巻き込まれて共振し始めます。脱力したエッジボイスに、後述する腹式呼吸の支えを加えることで、鋭く割れるような歪みの原形が立ち上がります。
ステップ3:呼気圧コントロールと腹式呼吸による「押し出さない息」の確立
歪みの音量を上げようとして首の筋肉を絞り込むのは最大の過ちです。音圧と歪みの深さを決定づけるのは、喉の力ではなく呼気圧コントロールと腹式呼吸の連動です。横隔膜をしっかりと押し下げて下腹部で息の圧力を一定に保ち、喉自体は「あくび」をしたときのようにリラックスして空間を広げます。管楽器のように、肺から一定の太い気流を仮声帯へと供給し続けることで、喉を締め付けることなく、安定した歪みを持続させることが可能になります。