「性行為の奥の痛みが年々ひどくなっている」「生理初日だけでなく、生理中ずっと起き上がれないほどの痛みに襲われる」という場合、単なる姿勢の偏りではなく、疾患が引き起こす骨盤内癒着と性交痛の連鎖を疑わなければなりません。
臨床現場において、後天的に固定性子宮後屈を引き起こす最大の要因は子宮内膜症との深い関連です。子宮の内側にあるはずの内膜組織が腹腔内へ逆流し、子宮の裏側にある「ダグラス窩」に生着すると、周期ごとに微小な出血と炎症を繰り返します。この炎症が治癒する過程で、子宮の背面と直腸が強力な線維組織で糊付けされたように貼り付いてしまうのです。
日本産科婦人科学会の診療指針でも示されている通り、ダグラス窩の癒着閉塞は激しい深部性交痛の典型的な発生源です。ペニスが挿入されて子宮が奥へ押されると、癒着した直腸や神経叢が無理やり引っ張られ、電撃のような痛みが走ります。さらに、子宮の筋肉層そのものが分厚く硬くなる子宮腺筋症による性交時の痛みも同様のメカニズムで発生し、子宮全体が弾力性を失うことでわずかな圧迫にも悲鳴を上げるようになります。