相続対策や新規就農を契機に農地売買を検討する際、最も多くの人が直面するギャップが「坪単価の価格構造」です。住宅地であれば都市近郊で坪30万〜100万円、地方都市でも坪5万〜15万円程度で取引されますが、農地売買の坪単価相場は桁が2つから3つ異なります。
一般社団法人全国農業会議所が公表する田畑売買価格データや地域の実勢取引価格によると、純粋な農業振興地域内の農用地区域(いわゆる「青地」)における田畑の相場は以下の水準が実態です。
- 地方の純農地(生産緑地・農用地区域内):坪あたり数百円〜3,000円程度(1反300坪あたり約10万〜90万円)
- 平坦で条件の良い大型水田:坪あたり2,000円〜5,000円程度(1反あたり約60万〜150万円)
- 中山間地域・条件不利農地:坪あたり数十円〜1,000円未満(買い手がつかず無償譲渡・贈与希望も多発)
- 市街化調整区域の転用可能農地(白地):坪あたり1万円〜3万円前後
- 市街化区域内の農地(宅地転用前提):近隣の宅地相場から造成費用を控除した価格(坪あたり数万〜数十万円)
「300坪もある土地なら数百万円で売却できるのではないか」という期待を抱いて農業委員会や不動産会社に相談した相続人が、提示された査定額(反あたり数十万円)に愕然とするケースは日常茶飯事です。
さらに、農地売買には法律上の厳格な規制が存在します。農地法第3条に基づき、農地を農地のまま売買・貸借する場合であっても、原則として農業委員会の許可が必須となります。以前は「下限面積要件(原則50アール=5反以上の耕作実績)」が課されていましたが、法改正により撤廃された現在でも、「農地をすべて効率的に利用して継続的に耕作すること」「必要な農作業に常時従事すること」といった営農計画の審査を通過しなければ、土地の所有権移転登記すら認められません。