「地震が起きたら、高層ビルのガラスが一斉に地上へ降り注ぐのではないか」という懸念は、視覚的な印象から生じる最大の誤解です。現実には、大地震時においてコンクリートの固定壁よりも、カーテンウォールの方がはるかに高い安全性を発揮するよう設計されています。
その最大の理由は、「剛(ごう)」ではなく「柔(じゅう)」で揺れを受け流す構造力学にあります。超高層ビルは地震の揺れを逃すため、あえて上層階ほど大きくしなる「柔構造」で作られています。もし外壁が硬いコンクリートのまま躯体にガッチリ固定されていれば、ビルのしなりに耐えきれず、壁面がねじ切れて破断・崩落してしまいます。
カーテンウォールは、躯体に取り付けられたファスナー部にスライド機構や回転軸が組み込まれており、建物が平行四辺形に歪む「層間変形」に対して、パネル同士が目地の隙間(クリアランス)を利用して独立して追従します。ガラス自体に無理なねじれ応力が加わらないため、激しい揺れの中でもガラスの破損や脱落が極めて起こりにくい仕組みが成立しているのです。
さらに見逃せないのが、超高層ビル外壁の徹底的な軽量化という側面です。外壁材の重量を比較すると、通常の鉄筋コンクリート壁が1平方メートルあたり約300〜400kgに達するのに対し、アルミニウムとガラスで構成されたカーテンウォールはわずか50〜80kg程度と、およそ5分の1以下に抑えられます。建物全体の自重が劇的に軽くなれば、地震時に建物へ作用する地震力(慣性力)そのものを小さく抑えられ、基礎工事の負担軽減や耐震設計の自由度向上に決定的なメリットをもたらします。