本作の構図を分析すると、一見混沌とした使徒たちのリアクションが、極めて精緻な数学的秩序によってコントロールされていることが分かります。画面の幅8.8メートル、高さ4.6メートルという広大な画面において、使徒たちは3人一組の計4つのグループに整然とまとめられています。この「3」という数字はキリスト教における三位一体を象徴し、「4」は世界の東西南北や四大元素を表す神聖な調和の比率です。
キリストの向かって左側には、以下の2グループ(6名)が配置されています。
- 左端グループ:驚きのあまり立ち上がるバルトロマイ、小ヤコブ、アンデレ。アンデレは両手を広げて当惑を露わにしています。
- 中央左グループ:ユダの裏切りを象徴するイスカリオテのユダ、激情に駆られて身を乗り出すペテロ、そして深い悲しみに俯くヨハネ。
一方、キリストの向かって右側には、真実を問い質そうとする使徒たちが配されています。
- 中央右グループ:両手を広げて悲嘆する大ヤコブ、人差し指を天に向けて疑義を呈するトマス、胸に手を当てて潔白を訴えるフィリポ。
- 右端グループ:激しい議論を交わすマタイ、タダイ、シモン。マタイの両手はキリストを指しながら、顔は長老シモンへと向けられています。
この劇的な十二使徒の配置の中心に鎮座するのがイエス・キリストです。背後の3つの窓から差し込む自然光が天然の後光(ヘイロー)の役割を果たし、キリストの身体は安定した正三角形を形成しています。さらに、天井の格間や壁面のタペストリーの線が一点に収束する一点透視図法の構図が用いられており、その消失点はキリストの右のこめかみに寸分の狂いもなく一致しています。鑑賞者の視線は、周囲の喧騒から幾何学的な必然性によって、絶対的な静寂を湛える中央のキリストへと誘導される仕掛けです。