渋谷の街頭看板でひときわ目を引く「生ビール199円」や「ハイボール80円」という破格のプライス。一般的な飲食店のビール原価が1杯あたり150円〜180円前後であることを考えると、ほぼ利益が出ない、あるいは原価割れに近い設定です。それでも店が潰れない背景には、飲食業界特有の巧みな販売戦略が隠されています。
最大の理由は、ドリンクを広告塔にした「マグネット商品」戦略です。アルコールをとことん安くして入店のハードルを下げ、その代わりにお通し代(400〜500円前後)や、粗利が70%を超える揚げ物・串焼き・スピードメニューで全体の客単価を引き上げる構造になっています。いわば、お酒は集客のためのツールであり、利益は料理で回収する仕組みです。
さらに、多くの店で導入されている「単品飲み放題」の理由にもカラクリがあります。1人あたり2品以上の料理注文を必須条件(2フード制)とすることで、テーブルごとの最低客単価を確実にコントロールしています。くわえて、QRコードを活用したスマートフォン注文システムの普及によってホール人件費を極限まで削り、浮いたコストをドリンク価格に還元する店舗が激増しました。薄利多売を成立させる高度なデジタル管理こそが、渋谷の激安価格を支えるエンジンなのです。