さらに問題を複雑にしているのが、産業ごとの「賃上げ体力」の格差である。グローバル市場で利益を確保できる大手製造業や一部のIT企業には一定の引き上げ余力があるものの、ローカルビジネスに依存する観光・飲食・介護業界の足腰は極めて脆弱だ。
伊豆エリアのある旅館経営者は言う。「インバウンド効果で客足は戻っているが、人手不足で客室の稼働を抑えざるを得ない。求人を出しても時給が低ければ応募ゼロ。しかし時給を上げれば営業利益が消える。まさに八方塞がりの状況だ」。業界による収益力の乖離が、一律の最低賃金引き上げという政策の刃をより鋭く鋭利なものにしている。