都内の一等地・目黒区駒場に約1万坪もの敷地を誇る旧前田家本邸。民間施設であれば千円前後の入場料が設定されても不思議ではない規模と保存状態を誇りながら、入場料は通年無料です。この寛大な公開方針の背景には、激動の昭和史が深く関わっています。
1929年(昭和4年)に完成した本邸は、太平洋戦争末期に利為侯爵が戦死した後、終戦とともに連合軍(GHQ)に接収されました。米第5空軍司令官などの官邸として使われ、一時は大規模な改装が施されるなど数奇な運命を辿ります。接収解除後の1957年、敷地は東京都が買収し、1975年に目黒区へと移管されて「駒場公園」として開園しました。
目黒区は「貴重な歴史的遺産を広く区民や国民全体で共有し、文化財保護と生涯学習の拠点とする」という方針を堅持しています。平成の大規模保存修理工事を経て2018年にリニューアルオープンした後も、公立公園内の重要文化財として無料公開が続けられており、誰もが気軽に本物の近代建築美に触れられる貴重なスポットとなっています。