篠笛には主に3つのオクターブ音域が存在します。温かみのある中低音域の「呂音(りょおん)」、透明感と抜けのある高音域の「甲音(かんおん)」、そして祭りの最高潮などで使われる超高音域の「大甲音(だいかんおん)」です。これらの吹き分けにおいて「強い息を吹き込めば高い音が出る」と誤解することが、上達を妨げる大きな要因となっています。
音高を変える本質は、息の「量」ではなく篠笛息の角度とスピード、そして「口内容積の圧縮」にあります。これを直感的に理解できるよう、各音域の物理データと吹き方の仕様を以下の比較表にまとめました。
篠笛呂音と甲音の出し方で意識すべきは、ホースの先をつまむと水の勢いが増す物理現象と同じアプローチです。呂音から甲音へ移行する際、息の吐出量をむやみに増やすと単に音が濁るか、管がオーバーブローで破綻します。そうではなく、舌の中央部を上あごに近づけて口腔内を狭め、唇中央の隙間を一回り絞ることで、同じ息の消費量でも流速(スピード)を2倍近くまで加速させます。これがクリーンにオクターブを跳躍させる技術です。
さらに高難度の篠笛大甲音を鳴らすコツにおいては、専用の替え指(クロスフィンガリング)を正確に押さえた上で、下腹部(丹田)の支えによる極めて高い空気圧を唄口の鋭角な稜線へピンポイントに打ち込む必要があります。息の当て所が1ミリでもズレると音が裏返るため、まずは甲音がかすれずに3管以上ロングトーンできるようになってから挑むのが定石です。