日本刀での特訓は、凄まじい成果となって現れる。1962年7月1日、大洋ホエールズ戦で一本足打法を実戦投入した王は、いきなり本塁打を放つ。そこから快進撃が始まり、シーズン本塁打王を獲得。やがてその一発は年間55本塁打へと昇華し、最終的には前人未到の通算868本塁打記録へと結実した。
荒川の自宅の畳は、王が擦り足で踏み込み続けたために擦り切れ、幾度も取り替えられた。天井には真剣の切っ先がかすめた無数の傷が残されていたという。これらの生々しい痕跡は、王がどれほどの覚悟を持って日々の鍛錬に挑んでいたかを雄弁に物語っている。
記録の数字以上に人々を魅了したのは、王の打撃フォームが持つ圧倒的な美しさだった。無駄な動作が削ぎ落とされた立ち姿は、まさに名刀を構える剣豪の佇まいであり、相手投手たちに言葉以上の威圧感を与え続けたのである。