油そばという名称から、一般的に「ラーメンよりも高カロリーで身体に悪いのではないか」というイメージを持たれがちです。しかし、この先入観には明確な誤解が含まれています。
食品成分分析や一般的なレシピデータを比較すると、通常の豚骨ラーメンや醤油ラーメン1杯あたりのカロリーがおよそ700〜900kcal、塩分相当量が6〜8gに達するのに対し、標準的な油そばはスープが存在しないため、約500〜650kcal、塩分相当量も2.5〜3.5g程度にとどまります。スープに溶け出す動物性脂肪や大量の塩分をすべて飲み干すリスクがない分、実はラーメンよりも塩分過多になりにくい構造となっています。ただし、無料だからとマヨネーズや背脂を過剰に追加したり、追い飯を大盛りで投入したりすればカロリーは跳ね上がるため、トッピングの選択こそが健康面での分水嶺となります。
また、油そばの真価を左右するのが、提供直後に行う調味料の投入作法です。基本となる油そばの美味しい食べ方(ラー油・酢)には、明確な科学的理由が存在します。
着丼したら、麺が熱いうちに酢とラー油を丼のフチに沿って素早く回し入れ、湯気が立っている間に底のタレごと一気に天地返しでかき混ぜるのが鉄則です。麺の熱気によって酢特有のツンとした刺激臭が飛び、まろやかな酸味と旨味だけがタレの油分に溶け込みます。この時、油と水分(酢)が激しく攪拌されることで一種の「乳化(エマルション)」状態が生まれ、タレが麺の表面にしっかりと吸着するようになります。冷めてから酢を加えても油と分離してしまい、本来の調和した旨味を引き出すことはできません。