生命の設計図を語る際によく登場する「DNA」「染色体」「遺伝子」。これらはすべて個別の物体としてバラバラに存在するわけではない。化学物質、構造体、そして情報という、異なる階層の概念である。
最もわかりやすい例えが「図書館と本」の関係だ。まず、化学物質としての実体がデオキシリボ核酸、すなわち「DNA」である。DNAはアデニン、チミン、グアニン、シトシンの4つの塩基が連なった長い紐のような分子であり、あの有名な二重らせん構造を描いている。たとえるなら、文字が印刷された「長いテープ」や「紙とインク」そのものだ。
そのDNAという長いテープの中で、タンパク質の作り方など具体的な意味を持つ「文章」に当たる部分が「遺伝子」だ。ヒトのDNAには約30億対もの塩基が存在するが、意味のあるレシピとして機能する遺伝子領域は全体のごくわずか、約1〜2%に過ぎない。残りの領域はスイッチの役割を果たしたり、構造を安定させたりする調整領域として働いている。
そして、この長大なDNAのテープを細胞の核の中にコンパクトに収めるため、タンパク質に巻きついて折りたたまれた「本」の形が「染色体」である。ヒトの1つの細胞には、46本(23対)の染色体が納められている。つまり、細胞という「図書館」の中に、46冊の「本(染色体)」があり、その本は「紙とインク(DNA)」でできており、そこに「料理のレシピ(遺伝子)」が書き込まれているという構図だ。この関係性を理解すれば、3つの混同は一気に解消する。