藤沢の真骨頂が発揮された代表例が、歴史的名車を生み出したスーパーカブ開発プロジェクトである。宗一郎に対して「蕎麦屋の出前持ちが片手で運転できるバイクを作れ」と無理難題を出し、現場の技術力を極限まで引き出した。製品が完成するやいなや、従来のバイク販売店ではなく、全国の米屋や酒屋にダイレクトメールを送るという前代未聞の流通改革を断行した。
この画期的な直販網の開拓により、日本の二輪車製造業における流通の常識は一変した。地方の小さな店舗がそのまま販売拠点となり、爆発的な売上を記録したのだ。販売店からの代金回収システムを月謝方式にするなど、金融面でのイノベーションも同時に達成し、持続可能な収益モデルを完成させた。