讃岐うどんの行列がこれほどまでに過熱する最大の理由は、単なるブームやSNS映えにとどまらない圧倒的なコストパフォーマンスと鮮度体験にあります。多くの名店では、1杯あたり300円〜500円という驚くべき庶民派価格を維持しながら、職人が早朝から粉を練り、足踏みと熟成を重ねた手打ち麺を提供しています。東京や大阪の高級専門店でも味わえない極上のコシと小麦の豊かな香りが、この価格で手に入るという体験価値は唯一無二です。
また、讃岐うどん特有の「三たて(打ちたて・切りたて・茹でたて)」を徹底する店ほど、客の回転スピードよりも麺の最高の状態を優先する傾向があります。茹で釜の容量や麺の締めにかかる時間は物理的に決まっており、作り置きを一切しない製麺所系店舗では、どうしても提供杯数に限界が生じます。需要が供給能力を大幅に上回る構造そのものが、必然的に長い行列を生み出しているのです。
さらに、セルフ店や製麺所の独特な注文システム、青空の下やビニールハウス内で食べる非日常感など、「香川の現地でしか味わえない食文化体験」そのものが観光客の旅愁を強く刺激しています。