審査員が真っ先に注目するのは、図鑑の模写ではなく「描き手自身のリアルな体験」が画面から匂い立つかどうかだ。受賞作のアーカイブを丹念に紐解くと、上位入賞を果たす児童画には際立った共通点が存在する。それは、トンボを画面中央に機械的に配置するのではなく、風の匂い、夕暮れの光、飛び立つ瞬間の緊張感といった「空気感」まで描き切っている点にある。
大人の手が入った整いすぎた絵よりも、少しいびつであっても子どもの驚きや発見がダイレクトに伝わる構図が評価を勝ち取る。例えば、泥まみれになって追いかけた畦道の草いきれや、指先に止まった複眼のきらめきなど、自分だけの記憶と結びついた作品は審査員の足を確実に止めさせる力を持っている。