「昨年きれいに刈り込んだのに、今年は一輪も花が咲かなかった」という相談は、園芸相談窓口や造園現場で最も多く寄せられるトラブルの一つです。この現象には、ヤマボウシの植物生理に基づいた明確な理由が存在します。
ヤマボウシの花芽が形成される花芽のつく時期は7月〜8月です。当年に伸びた短い充実した枝の先端に、翌春咲くための花芽(丸みを帯びたぷっくりとした芽)が夏場のうちに作られます。このメカニズムを知らずに、秋口から初冬にかけて「伸びすぎたから」と枝先を丸く刈り込んでしまうと、枝先にスタンバイしていた花芽をすべて切り落とす結果になります。
ヤマボウシの花が咲かない原因を整理すると、以下の3要素に集約されます。
第一に、前述した「花芽形成後の枝先切除」です。第二に、日照条件の不足です。ヤマボウシは日当たりを好む陽樹であり、日陰では花芽の分化率が極端に落ちます。第三に、窒素過多による「樹勢の暴走」です。肥料を与えすぎたり、誤った強剪定によって木が生存の危機を感じると、花を咲かせる生殖成長を後回しにし、枝葉ばかりを伸ばす栄養成長へと傾いてしまいます。