医学・心理学の領域において、注意力散漫とは「外部からの刺激や内面的な雑念に意識が奪われ、特定の対象に対して持続的に注意を向けたり、適切に配分・切り替えたりすることが困難な状態」を指します。脳科学の視座から見ると、これは大脳の司令塔である「前頭前皮質」の実行機能(エグゼクティブ・ファンクション)が正常に作動していないシグナルです。
多くの人が「集中力がないのは自分の甘えだ」と自責の念に駆られますが、人間のワーキングメモリ(作業記憶)の容量には厳格な限界が存在します。スマートフォンの通知、チャットツールの頻繁な割り込み、マルチタスクの強要が日常化した環境下では、健常者であっても脳の情報処理能力が飽和し、認知的過負荷(コグニティブ・オーバーロード)を引き起こします。
つまり、注意力散漫を引き起こす原因は、個人のメンタリティではなく「脳の神経伝達物質のアンバランス」や「過剰な情報環境」にあるケースが極めて多いのです。