シンガポール現地で外国人が民族衣装を着用する機会として最も多いのが、シンガポール伝統衣装結婚式への参列と、毎年国中が熱狂するシンガポールナショナルデー衣装の選定です。現地取材で見えてきた実際のドレスコードと現場の空気感を解説します。
まず、多民族が交差する結婚式への招待客として参列する場合のプロトコルです。シンガポールの結婚式では、招待された側の民族衣装を着て祝意を示す行為は非常に好意的に受け止められます。たとえばマレー系の結婚式(HDB公営住宅の共用スペース「ボイドデッキ」やホテルで開催される披露宴)に参列する際、外国人男性がバジュ・メラユを正しく着用して訪れると、新郎新婦の家族から絶大な敬意と歓迎を受けます。
ただし、現場では細やかな配慮が求められます。マレー系の結婚式では、新郎新婦が着用するテーマカラー(白、エメラルドグリーン、ゴールドなど)と完全に被る単色無地のバジュ・メラユは避けるのがスマートです。落ち着いたパステルトーンやダークブルーを選び、サンプン腰布を上品に合わせるのが現地エキスパートの間で推奨されるマナーです。
一方、8月9日のナショナルデー(建国記念日)においては、国旗の色である「赤(Red)」と「白(White)」を身につけることが絶対的なドレスコードとなります。この日は民族の壁を越え、赤いバジュ・メラユに白いサンプン、あるいは赤と白を基調としたバティックシャツやクルタを身にまとった男性たちが街を埋め尽くします。多民族が国家の団結を誇示する、シンガポールならではの圧巻の光景です。