本作が放つ不気味さは、音楽的な仕掛けにとどまらず、当時の社会問題や世界的なオカルト現象とも結びついて増幅していきました。
リリース直後、英公共放送BBCはこの曲の放送禁止処分を下しました。問題視されたのは、ジョンとポールが曲の節目で繰り返す「I'd love to turn you on」というフレーズです。直訳すれば「君の気分を高揚させたい」という意味ですが、当時のカウンターカルチャーにおいて「turn on」はLSDなどのドラッグによるトリップを意味する隠語として広く使われていたため、薬物乱用を助長するという理由で電波から締め出されたのです。この「禁忌の曲」というレッテルが、リスナーの好奇心と恐怖をさらに煽ることになりました。
さらに1969年頃からアメリカを中心に爆発的な広がりを見せたのが、悪名高い「ポール死亡説(Paul is dead)」という都市伝説です。「ポール・マッカートニーは1966年に交通事故ですでに死亡しており、現在のポールは替え玉である」という陰謀論において、『A Day in the Life』はその動かぬ証拠として槍玉に挙げられました。
「He blew his mind out in a car」という歌詞はタラ・ブラウンではなく実はポールの死を描写したものだと解釈され、オーケストラの上昇音は事故直前の制御不能な車の暴走を表現していると噂されました。こうしたオカルト的な文脈が後付けされたことで、楽曲そのものが持つ不気味なオーラが決定的なものとなったのです。