房総半島東方沖の下部では、日本列島が乗る北米プレート(陸側のプレート)の下に、南方向からフィリピン海プレートが年間数センチのペースで沈み込んでいます。通常、プレート同士が強く固着している箇所ではエネルギーが一気に解放されて巨大地震を引き起こしますが、この領域ではプレート境界面が数日から数週間かけてゆっくりと滑る「スロースリップ現象(ゆっくりすべり)」が数年ごとに発生します。
国土地理院の電子基準点ネットワーク(GEONET)および防災科学技術研究所の観測データによると、今回の地震活動もスロースリップの進行域近傍で発生していることが判明しています。断層面がゆっくり滑ることで周囲の固着領域にせん断応力(ストレス)が集中的にかかり、耐えきれなくなった微小断層が次々と破壊されて中規模地震を誘発する構造です。
気になる「首都直下地震」との連動性について、地震学の構造的見解は極めて冷静です。首都直下地震で想定される震源モデル群(東京湾北部地震や千葉県北西部地震など)と、房総半島東方沖のプレート境界浅部とは、沈み込み構造の深さ・力源断層ともに幾何学的な分離がなされています。スロースリップが直接的に直下型大地震の起爆スイッチとなる決定的な証拠はありませんが、地殻ひずみ分布が局所的に再配置される過程であるため、関東全域の防災警戒度を一段階引き上げる契機と解釈するのが学術的に極めて妥当です。