電子レンジを開けた瞬間の嫌な悪臭が水拭きで取れない理由は明快です。庫内に充満する悪臭の正体は、食品を温めた際に飛散した油脂やタンパク質、アミノ酸が気化して内壁に焼き付き、化学結合を起こしているためです。これらは水分子と結合しにくい性質を持っており、冷たい水拭き程度では表面の水分が延びるだけで、悪臭の核となっている有機化合物を分解・中和できません。
悪臭には大きく分けて2つの化学的ルーツが存在します。1つは、肉や揚げ物などを温めた際に飛び散る油脂や炭水化物が酸化・焦げ付くことで発生する酸性臭気です。特に電子レンジ焦げ臭い原因の多くは、内壁や電波出口付近に付着した食品カスが加熱を繰り返すことで熱分解され、焦げ付きを繰り返している点にあります。これらはアルカリ性の物質を用いなければ中和・乳化できません。
もう1つは、焼き魚やシーフード料理を加熱した後に残るアミン臭をはじめとしたアルカリ性臭気です。代表格であるトリメチルアミンは強い生臭さを放ち、酸性の成分で中和しない限り、壁面に残留し続けて揮発を繰り返します。このように、汚れの性質と反対のpH値を持つ素材を蒸気化させてアプローチしなければ、どれほど力を込めて擦っても嫌な匂いは消えません。