サイズを測り「平均値の範囲内だった」と安心したとしても、「それでも写真で見ると顔が大きく見える」という疑念が消えないケースがあります。ここには、人間の視覚認知のメカニズムと光学的な錯覚という盲点が潜んでいます。
第一の盲点は、前述したスマートフォンのカメラレンズによる歪曲収差(ディストーション)です。多くのスマートフォンに搭載されている広角レンズは、画角を広く確保できる反面、レンズの中心に近い被写体を押し広げ、周辺部を引き延ばす性質を持っています。集合写真の端に写った人の顔が不自然に横へ広がって見えたり、手持ちの自撮りで鼻先や輪郭が肥大化して見えるのは、骨格のせいではなく光学レンズの物理的な特性によるものです。
第二の盲点は、「絶対的なサイズ」と「見た目の印象」の乖離です。顔の美しさや引き締まり感を決定づけるのは、全頭高のミリ単位の長さではなく、顔の縦横比率と黄金比です。
古典的な美術解剖学において、理想的なプロポーションとされる比率は「横幅1:縦1.618(黄金比)」、あるいは眉上・鼻下・顎先の縦の比率が「1:1:1」に整っている状態とされています。たとえ全頭高が平均より1cm小さくても、顎が極端に後退していたり横幅との比率が正方形に近かったりすると、視覚的には「丸く大きく」認識されてしまいます。逆に、平均より全頭高が長くても、フェイスラインがシャープで首が細く長い人は、周囲から「引き締まった小顔」として認識されます。絶対値だけに一喜一憂することが、いかに本質から外れているかが分かります。