手元に届いたラ・フランスがまだカチカチに硬い場合、適切な追熟環境を整える必要があります。追熟とは、果実自体が呼吸しながらエチレンガスを放出し、不溶性のペクチンを水溶性ペクチンへと分解して果肉を柔らかく滑らかに変える生化学的プロセスです。
ラフランスの追熟方法における基本条件は、「風通しの良い直射日光の当たらない常温(15℃〜20℃前後)」で保管することです。ここで絶対に避けるべきなのが、購入後すぐに冷蔵庫に入れてしまうことです。10℃以下の低温環境に置かれると、エチレンの生成が阻害され、追熟が完全にストップしてしまいます。そのまま長期間放置すると、甘みが増さないまま果肉だけが劣化する「低温障害」を引き起こすため注意が必要です。
追熟を早めたい場合は、リンゴやバナナと一緒にポリ袋へ入れ、軽く口を閉じて常温に置く手法が極めて有効です。リンゴが放出する強力なエチレンガスがラ・フランスの熟成を強力に促進し、通常1週間から10日ほどかかる追熟期間を2〜3日短縮させることができます。
一方で、保存方法と冷蔵のタイミングについては、「軸の周りにわずかな弾力を感じた完熟の1歩手前」で冷蔵庫の野菜室へ移すのがベストです。冷やすことで熟度の上昇を緩やかにし、美味しさを2〜3日キープできます。ただし、冷やしすぎると特有の甘みと香りの知覚が鈍るため、「食べる1〜2時間前に野菜室から出して室温に戻す」、あるいは「食べる直前2〜3時間だけ冷やす」のが、芳醇なフレーバーを極限まで楽しむプロの技です。