讃岐うどんといえば、製麺所の片隅で丼を手に立ち食いするような、素朴かつスピーディーな文化を想起する方が多いはずです。その中にあって、うどん本陣山田家が切り拓いたのは「讃岐うどん×文化財建築×庭園美」という、圧倒的な情緒と格式を兼ね備えた唯一無二のエンターテインメント空間でした。
最大の魅力は、敷地に一歩足を踏み入れた瞬間に広がる景観です。約800坪の屋敷庭園は四季折々の表情を見せ、重厚な梁や格子戸が残る母屋は、国の登録有形文化財に指定されています。歴史の息吹を感じる座敷で中庭を眺めながらうどんを待つ時間は、単なる食事を超えた贅沢な文化体験そのものです。ファストフード的になりがちなうどん巡礼において、「旅の記憶に深く刻まれる目的地(デスティネーション・レストラン)」として機能している点こそ、全国から旅行者が殺到する決定的な理由といえます。
さらに見逃せないのが、「ざるぶっかけうどん」の発祥店としての揺るぎない技術力です。1978年(昭和53年)の創業当時、讃岐の日常食であったぶっかけうどんを、洗練された「ざるぶっかけ」へと昇華させ、特製出汁とともに提供した先見の明は今も色あせていません。自社工場での徹底した温度・湿度管理のもとで練り上げられる純生麺のコシ、そしてイリコと昆布、鰹節が絶妙に調和した秘伝のダシが、空間の美しさに負けない力強い満足感をもたらしています。