知財実務において一般に広く誤解されているのが、「キャラクター」という言葉の法的な定義です。結論を先に言えば、日本の著作権法上、キャラクターそのもの(抽象的な概念・人格・設定)には著作権が認められていません。
この原則を確立したのが、知財関係者の間で語り継がれる「サザエさん事件」(東京地裁昭和51年)や「ポパイ・ネクタイ事件」(最高裁平成9年判決)です。最高裁判所はポパイ事件において、以下のような厳格な判断基準を示しました。
「著作権法上保護されるのは思想または感情を創作的に表現したものであって、登場人物の名称、容貌、性格などの特徴の組み合わせであるいわゆるキャラクターは、抽象的な概念にすぎず、客観的表現物そのものではない」
つまり、「セーラー服を着てホウレン草を食べると怪力になる水夫」という概念やアイデアそのものは著作権の対象外であり、著作権が発生するのはあくまで「漫画やアニメのコマとして具体的に描かれた図柄・絵」に限られます。
そのため、誰かが描いた既存のイラストをそのままトレースしたりコピーしたりする行為は「具体的表現の無断複製」として著作権侵害になります。一方で、過去の作品から着想を得て、独自のタッチでゼロから描き起こした表現物であれば、著作権侵害のハードルは法律上、大きく変化します。この法的性質を取り違えたままビジネスを進めることが、深刻なトラブルの火種となっています。