バウムクーヘンといえば、かつては「口の中の水分を奪われるため、紅茶やコーヒーが手放せない焼き菓子」という印象を持つ人が少なくありませんでした。その既成概念を根本から覆したのが、静岡県浜松市を発祥とする治一郎です。
公式ブランドサイトや開発現場の記録によれば、治一郎が目指したのは「ケーキのようなふんわり感と、極限まで高めたしっとり感」の両立でした。一般的なバウムクーヘンは全卵を一度に泡立てる製法が主流ですが、治一郎では卵黄と卵白を別々に泡立てる「別立て法」を採用しています。これにより、生地の中に細かな気泡を均一に含ませ、スポンジケーキにも似た柔らかさを生み出しています。
さらに特筆すべきは、職人が片時も離れずに火加減をコントロールしながら焼き上げる「うすくレアな24層の年輪」です。焼き加減をわずかでも誤れば生地が重さに耐えかねて心棒から滑り落ちてしまう極限の柔らかさを、熟練の職人技で均一に積み重ねています。外側をコーティングするシャリッとした食感のフォンダン(砂糖衣)との対比も計算し尽くされており、口に含んだ瞬間に解けるような食体験が「飲み物がいらない」という評価の確固たる根拠となっています。