日常的に口にしている豆腐ですが、絹豆腐と木綿豆腐の作り方の違いを正確に把握している人は多くありません。両者の決定的な分岐点は、「凝固させた後に水分を絞るプロセスが存在するか否か」という製造工程にあります。
木綿豆腐は、豆乳に凝固剤(にがり等)を加えて一度おぼろ状に固めた後、それを崩しながら木綿の布を敷いた型箱に流し込みます。上から重石を乗せて圧力をかけ、余分な水分(上澄み液)をしっかりと絞り出して再凝固させることで、あの独特のしっかりとした質感と表面の布目が生まれます。
対する絹ごし豆腐は、木綿豆腐よりも濃度の高い豆乳を使用し、型箱に流し込んだ豆乳へ一気に凝固剤を投入してそのまま均一に固め切ります。途中で崩したり水分を絞ったりする工程は一切挟みません。型箱の中で豆乳全体がそのままゲル化するため、水分をたっぷりと含んだみずみずしく滑らかな口当たりに仕上がります。
ここで多くの人が抱く疑問が、なぜ絹と木綿と呼ぶのか名前の由来です。木綿豆腐が「木綿布を敷いた型箱で水分を絞る」という道具そのものに由来しているのに対し、絹ごし豆腐は「絹の布で漉して作っている」わけではありません。木綿のザラッとした舌触りに対して、「まるで絹織物のようになめらかできめ細やかな舌触りである」という比喩表現から名付けられた呼称です。実用的な製法から名付けられた木綿と、完成品のテクスチャーの美しさを讃えて名付けられた絹という、情緒豊かな命名の背景が存在します。