見かける機会が激減したコカコーラ瓶の廃止理由は一体なぜなのか。その最大の要因は、コカコーラ瓶販売終了の理由として流通業界で長年議論されてきた「リターナブル瓶システムの構造的崩壊」にあります。
コカ・コーラの象徴だった190mlレギュラー瓶は、本来「リターナブル瓶(回収して再洗浄し、何度も再充填する瓶)」として運用されていました。昭和の時代、酒屋や駄菓子屋が空き瓶を1本あたり10円前後の保証金(デポジット)と引き換えに回収し、ボトラー各社の配送トラックが回収ルートを巡回して工場へ持ち帰る強固な循環エコシステムが機能していたのです。
しかし、平成から令和にかけてこの仕組みが急速に破綻しました。主な理由は以下の3点に集約されます。
第一に、リターナブル瓶の製造中止と回収コストの劇的な上昇です。ガラス瓶は中身が入った状態で約500g、空き瓶だけでも約300gという重さがあります。500mlペットボトルの空容器が約20g前後であることと比較すると、その重量差は15倍以上。原油高やドライバー不足が深刻化する中、中身のない重いガラス瓶を回収して工場へ運ぶ往復の燃料費・人件費は、ボトラー各社の経営を直撃しました。
第二に、空き瓶の回収率低下です。コンビニエンスストアの台頭や自動販売機の屋外設置が進むにつれ、消費者は購入したその場で瓶を飲み干して返却するのではなく、持ち歩いて放置したり、家庭ごみとして廃棄したりするようになりました。回収されなければデポジット制も成り立たず、高価な瓶を毎回新造しなければならなくなり、リサイクルによるコストメリットが完全に消失したのです。
第三に、コカコーラボトラーズジャパンの公式発表やIR資料にも表れている製造設備の老朽化と拠点集約です。リターナブル瓶を運用するには、苛性ソーダ等を用いた巨大な自動洗瓶機や高精度の異物混入検査機など、ペットボトルやアルミ缶とは全く異なる大規模な専用設備が必要です。これらの設備が耐用年数を迎える中、清涼飲料市場の大半が軽量なペットボトルへ移行した現実を受け、各ボトラーは巨額の更新投資を見送り、瓶詰めラインの閉鎖・統合を決断しました。これが「コカコーラ瓶はなぜなくなったのか」という問いに対する物流・生産現場からの偽らざる回答です。