ネット上の言説を見渡すと、「生理が来て赤飯を炊くのは、子どもを産める身体になったことを喜ぶ卑猥な風習だから廃止すべきだ」という過激な批判論を目にすることがあります。しかし、歴史の事実関係を掘り下げると、そこにはいくつかの誤認が存在します。
先述の通り、赤飯のルーツは「凶事の厄祓い」にあります。古来の日本において、赤い色は慶事だけでなく、身内の不幸や病気といった災厄を祓う際にも用いられていました。つまり、「初経が来て喜ばしいから赤飯を食べる」のではなく、「身体から出血するという異変・厄難から身を守るために、小豆の神聖な力で魔を祓った」というのが民俗学的な本質です。
これが時代を経るにつれて「小豆=めでたい席の食べ物」という慶事のイメージへとすり替わり、さらに近代以降の家父長制的な価値観と結びついた結果、「娘の成熟を公にする宴」へと変質してしまいました。本来の祈りは「無事に育ってほしいという切実な厄除け」であったにもかかわらず、形式だけが残り、現代の少女たちを苦しめる結果となった点は、風習の変容がもたらした最大の皮肉と言えるでしょう。