『週刊少年ジャンプ』本誌での最終回、およびその後に『ジャンプGIGA』に掲載された前後編の完結編(アフターストーリー)の結末を振り返ると、物語は恋愛の成就ではなく「楠雄の人間的成長」に焦点を当てて幕を閉じました。
地球を滅亡から救った楠雄は、兄・空助の開発した機器によって念願だった超能力を放棄し、普通の人間としての生活をスタートさせます。この瞬間、周囲の心の声が聞こえなくなり、テレパシーや透視から解放された楠雄は、初めて生身の人間として他者と向き合うことになりました。その矢先、窓ガラスに映る虫に驚き、無意識のうちに能力でガラスを粉砕してしまうラストシーンが描かれます。完全に消え去っていなかった超能力の再発を自覚し、楠雄がニヤリと不敵に笑うところで物語は完結しました。
ここで極めて重要な伏線となったのが、超能力を失った直後の照橋心美との対峙です。透視能力がなくなった楠雄の眼前に現れたのは、内面の骨格や内臓ではなく、生身の皮膚を持った本物の完璧美少女・照橋心美の姿でした。楠雄はこれまでどんな美女を見ても決して口にしなかった感嘆の声「おっふ」を、喉元まで出かかりながら必死に呑み込んでいます。
作中では「おっふ」を言わせたら照橋さんの完全勝利という明確なルールが存在していました。楠雄が本気で「おっふ」しかけたという事実は、彼が理屈抜きで心美の美しさと魅力に屈服しかけた証拠です。正式に入籍や交際の報告が描かれたわけではないものの、読者に対して「楠雄がいつ照橋さんに屈して付き合ってもおかしくない」という強力な予感と余韻を残した幕切れでした。