野球界には古くから「2mを超える長身打者はメジャーで大成しない」という根強いバイオメカニクス的定説が存在していました。その理由は極めて明確です。
第一に、腕(リーチ)が長いため、バットの軌道が外回りする「ドアスイング」になりやすく、メジャー屈指の剛腕投手が投じる内角高めの160km/h近いフォーシームに振り遅れる点。第二に、ストライクゾーンが広大であるため、変化球の見極めが難しく三振が激増する点です。実際、ジャッジ自身もフル参戦1年目となった2017年には新人最多となる208三振を喫し、弱点の内角を執拗に突かれて打率が急降下する苦悩を味わいました。
しかし、ジャッジはこの構造的欠陥を根底から覆す打撃革命を断行しました。自著や特番インタビューにおいて、ジャッジは「長い腕を振り回すのではなく、いかにトップの位置からグリップを最短距離で落とし、体の回転だけでバットを走らせるかを徹底的に反復した」と明かしています。
ジャッジの現在のスイングフォームは、テイクバックが極めて小さく、バットのヘッドが体の近くを通るコンパクトな軌道を描きます。テコの原理を活かし、強靭な体幹のねじれ戻しを一瞬でバットに伝えることで、内角の剛速球をレフトスタンド上段へ叩き込むと同時に、外角の逃げる球を逆方向のライトスタンドへと軽々運びます。「大柄だから力任せに打っている」という世間のイメージは完全な誤解であり、実態はMLBで最も緻密かつ無駄を削ぎ落としたミリ単位の身体操作を行っているのです。