当時の音楽雑誌『ROCKIN'ON JAPAN』や『MUSICA』などの特番インタビューにおいて、野田洋次郎は『狭心症』が生まれた背景について、自身の精神を削り取るような赤裸々な言葉を残しています。「綺麗な言葉や前向きなメッセージだけで歌を終わらせることが、どうしても許せなかった」と語るその姿勢には、当時の彼が抱えていた強烈な違和感と危機感が滲み出ていました。
特に注目すべきは、シングルに同時収録されたカップリング曲『寿限無』とのコントラストです。落語の長寿を願う名前の羅列をモチーフにした『寿限無』では、息つく間もない言葉の連射によって情報過多な世の中をシニカルに笑い飛ばします。一方の『狭心症』では、言葉数を削ぎ落とし、一語一語に血を通わせるようにして「命の重みと無力感」を吐露しています。
野田はインタビューの中で、自分自身の中にある「聖人になれない醜さ」や「他人の悲しみに泣きながら、次の瞬間には自分の夕飯の心配をしている利己性」を誤魔化さずに直視したと明かしています。この嘘偽りのない自己嫌悪と告白こそが、15年以上を経た現在もリスナーの胸を抉り続ける理由です。