本作が公開当時から激しい賛否両論を巻き起こした最大の要因は、『君の名は。』で描かれた「災厄を未然に防ぎ、全員が救われる奇跡のハッピーエンド」という大衆的なカタルシスを、新海誠監督自らが解体した点にあります。
新海監督は各種インタビューや公式オフィシャルブックにおいて、『君の名は。』の世界的成功に伴い、「災害をなかったことにする都合の良い物語だ」といった批判や、過度な道徳的役割を求められたことへの違和感を率直に明かしています。その反動として、「全員が納得する正解ではなく、誰かを激怒させるかもしれない物語を作らねばならない」という危機感が『天気の子』の原動力となりました。
【実態検証】映画ファンの生の声と議論の焦点
公開当時から映画レビューサイトやSNSコミュニティでは、観客の間で評価が真っ二つに分かれました。肯定派からは「大人が押し付ける『世のため人のため』という綺麗事を吹き飛ばす圧倒的な青春の衝動に涙した」「綺麗事ではないリアルな叫びが胸に刺さる」という熱狂的な支持が集まりました。
一方で批判派からは、「東京を水没させておきながら、2人だけの世界に閉じこもるのは身勝手すぎる」「主人公が法を犯してまで暴走することに共感できない」といった倫理面での拒否反応が示されました。しかし、この「賛否両論が起きること自体」が新海監督の狙い通りであり、観客一人ひとりに生き方のスタンスを問いかける装置として機能したことは間違いありません。