住環境や庭で見かける多足類を安全に処理するためには、まず相手が何者であるかを冷静に識別しなければなりません。節足動物の多足類を見分ける際、注視すべきポイントは「足の生え方」「移動速度とリアクション」「体型と断面」の3点に集約されます。
国内の住宅地で頻繁に目撃されるムカデ(トビズムカデやアオズムカデなど約60種)とヤスデ(ヤケヤスデなど200種以上)は、進化の過程で全く異なる身体構造を獲得しました。
第1の違いは、ムカデとヤスデの足の本数と生え方です。ムカデは「唇脚綱(しんきゃくこう)」に属し、胴体の1つの体節(節)から左右に1対(2本)の脚が生えています。脚は外側に向かって長く張り出しており、全体として平たい印象を与えます。一方のヤスデは「倍脚綱(ばいきゃくこう)」に分類され、頭部付近を除く胴体の各体節から左右に2対(4本)ずつ脚が生えています。脚は短く、胴体の真下に向かって密集して生えているのが特徴です。
第2の違いは、刺激を与えたときの挙動です。ムカデは攻撃性が高く、威嚇しながらS字にくねるように素早く走って逃走、あるいは対象に向かって突進して毒牙で咬みつこうとします。これに対し、ヤスデは歩行速度が非常に遅く、地面を滑るように整然と前進します。身の危険を察知すると、ダンゴムシのように体を渦巻き状にギュッと丸まる習性を見せます。この防御姿勢をとるかどうかは、瞬時に判別できる最もわかりやすい指標です。
第3の違いは、体の断面形状です。ムカデは獲物の隙間に潜り込むために平べったい扁平な体つきをしていますが、ヤスデは円筒形で硬いクチクラ層の殻に覆われており、光沢のある細いパイプのような形状をしています。