八ヶ岳南麓の豊かな原生林に抱かれた「萌木の村」は、1971年に創業者の舩木上次氏が喫茶店「ROCK」を開いたことからその歴史が始まりました。単なる商業施設とは一線を画し、木々を伐採し尽くすことなく、地形と植生を活かして創り上げられた約3万3,000平方メートルの敷地には、職人たちのクラフトショップや工房、カフェが木道で結ばれるように配置されています。
かつて全国を席巻した清里ブームが去り、駅前の商業エリアが衰退を見せる中でも、萌木の村が圧倒的な集客力を維持し続けている背景には、徹底したエコロジカルな空間デザインと本物志向のカルチャーがあります。世界的ランドスケープデザイナーのポール・スミザー氏が監修した「ナチュラルガーデン」は、八ヶ岳の自生種や宿根草を中心に構成され、無農薬・無化学肥料で維持管理されています。四季折々の野花が咲き乱れ、訪れる季節ごとに全く異なる表情を見せる点が、リピーターを惹きつけて離さない大きな要因です。
敷地内に足を踏み入れると、アスファルトではなくウッドチップの敷かれた小道が広がり、八ヶ岳の澄んだ空気と木々の香りに包まれます。単なる買い物や食事の場にとどまらず、「森で過ごす豊かな時間」そのものを提供していることが、半世紀にわたり選ばれ続ける最大の強みと言えます。