箱根駅伝の復路において、総合優勝争いと同等、あるいはそれ以上に過酷を極めるのがシード権争い(総合10位以内)と繰り上げスタートを巡る戦いです。翌年の本戦出場権を自動的に獲得できるトップ10と、予選会へ回る11位との間には、チームの強化方針やスカウティング、そして選手個々の競技人生に天と地ほどの差が生じます。
復路では、8区から9区、そして10区にかけて5〜6校がわずか数十秒の差にひしめく大混戦が日常茶飯事です。選手たちには「前を追うアグレッシブさ」と同時に「後続に飲まれない冷静なペース配分」という相反する心理コントロールが求められます。プレッシャーから給水中継で呼吸を乱したり、終盤の脱水症状で失速したりするケースも少なくありません。
さらに非情なのが、先頭通過から一定時間が経過すると自校の襷(たすき)が届く前に無念のピストルが鳴る「繰り上げスタート」の存在です。特に鶴見中継所(9区〜10区)では先頭から20分が経過すると、母校の伝統の襷ではなく黄色と白の大連盟襷を掛けて走り出すことになります。10区アンカーが中継所の手前数十メートルで繰り上げの銃声を聞き、涙を流しながら走り出す光景は、箱根駅伝の厳しさを象徴する最大のドラマです。