ここで多くの市民が誤解しやすいのが、「市議会で辞職勧告が決議されれば、市長は即座に失職するのか」という点です。法律上の建て付けを正しく理解しておく必要があります。
市議会が可決する「辞職勧告決議」は、あくまで議会としての意思表明(道義的要請)であり、法的な拘束力は一切ありません。つまり、市長本人が頑なに辞任を拒否し続ければ、そのまま任期満了まで居座ることが制度上は可能です。一方で、法的な強制力を伴う手段としては、地方自治法第178条に基づく「不信任決議」が存在します。ただし、不信任決議の可決には議員定数の3分の2以上の出席と、出席議員の4分の3以上の賛成という極めて高いハードルが課されています。
さらに、不信任が決議された場合でも、市長側には「議会の解散」という対抗手段が認められており、解散に伴う市議選の実施には数千万円単位の税金が新たに投入されることになります。市民が直接首長を解職する「リコール(住民投票)」という権利もあるものの、有権者の一定割合以上の署名を集める必要があり、多大な労力と時間を要するのが現実です。