本作を語る上で欠かせないのが、余韻を残した感動的なラストシーンの意味です。物語の幕切れは、江ノ島電鉄・極楽寺駅の改札を出た千明と和平が、いつものように些細な言葉の揚げ足を取り合いながら並んで歩く場面でした。「和平さん!」「なんですか吉野千明さん!」と呼び合い、丁々発止の口喧嘩を繰り広げながら画面がフェードアウトしていく演出は、多くのファンの胸を打ちました。
なぜ脚本家の岡田惠和氏は、二人に明確な「結婚」というゴールを与えなかったのでしょうか。当時の制作陣の公式インタビューや演出意図を検証すると、そこには「大人の人生は、どこかで完成して終わるものではなく、続いていく日常そのものが愛おしい」という強い哲学が存在していたことが分かります。
昭和から平成初期のドラマに多く見られた「白馬の王子様と結ばれて幕を閉じる」構造に対し、本作は「50歳を過ぎても人生の迷いは消えないし、恋も仕事も途中のまま続いていく」というリアリズムを提示しました。完璧な答えを出さないオープンエンド形式をとったからこそ、視聴者は自分自身のこれからの人生を前向きに肯定するエネルギーを受け取ることができたのです。