フィクションのセリフとして親しまれるプルスウルトラですが、その歴史的背景には古代の神話と大航海時代のパラダイムシフトが深く関わっています。
古代地中海世界において、ジブラルタル海峡の両岸にそびえる山々は「ヘラクレスの柱」と呼ばれ、人類が到達できる限界地点だと信じられていました。そこにはラテン語で「Non Plus Ultra(これより先は何もない/世界の果て)」と刻まれていたという伝説が存在します。つまり、海峡の向こうの大西洋へ進むことは死と破滅を意味するタブーでした。
この固定観念を覆したのが、16世紀の神聖ローマ皇帝でありスペイン国王でもあったカール5世(カルロス1世)です。コロンブスによる新大陸到達を受け、カール5世は否定の「Non」を取り払い、あえて「Plus Ultra(更に向こうへ)」を自らの個人モットーおよびスペインの国標として採用しました。
未知なる大海原を恐れず、世界の限界を押し広げたスペイン黄金時代の精神を象徴するこの標語は、現在もスペインの国章や国旗の中に描かれているヘラクレスの柱に巻き付いたリボンに刻まれています。