日本人の舌に馴染み深い小エビのカクテルサラダですが、その源流は19世紀後半のイギリスおよびアメリカで確立されたシュリンプ・カクテル(Shrimp Cocktail)に遡ります。当時はカクテルグラスの縁に茹でた大型エビを引っ掛け、ホースラディッシュ(西洋ワサビ)を効かせたスパイシーなケチャップベースのソースにディップして食すスタイルが社交界や高級ホテルの定番でした。
このクラシックな前菜を日本向けに大胆にローカライズし、大衆的な日常食へと昇華させた立役者がファミリーレストランチェーンの雄・サイゼリヤです。同社が1980年代からメニュー展開を本格化させる中で、サイゼリヤ小エビのサラダは看板商品としての地位を築き上げました。高級料理の象徴だったエビを、冷たいレタスの上に惜しげもなく山盛りにし、マヨネーズをベースにトマトの酸味と独自の旨味をブレンドしたドレッシングで包み込む――この逆転の発想が、老若男女を虜にする国民的人気メニューを生み出した背景にあります。
日本人がこの味に抗えない最大の理由は、「エビのアミノ酸(グリシン・アラニン)」が持つ甘みと、ドレッシングに含まれる「グルタミン酸」が引き起こすうま味の相乗効果にあります。淡白になりがちな冷製レタスに対し、油分と酸味、そしてエビ特有の弾力が加わることで、咀嚼のたびに脳へ強い報酬シグナルが送られる設計になっているのです。