ネット上の掲示板やSNSで定期的に浮上するのが、「実は2人は不仲なのではないか」「ムックがガチャピンに嫉妬している」という不仲説です。子供向けキャラクターとしては異例ともいえるこの黒い噂は、一体どこから生まれたのでしょうか。
その発端は、1990年代から2000年代にかけて隆盛を極めた「ガチャピン チャレンジ」の存在にあります。スキージャンプ、スキューバダイビング、スカイダイビング、ハンググライダー、モトクロス、空手瓦割り、果てはロシアの施設での宇宙飛行士訓練に至るまで、ガチャピンが次々と命がけの超人技を成功させ、世間の脚光を一身に浴びていきました。その間、ムックは「地上で旗を振って応援するだけ」という構図が定着し、明確な“露出格差”が生じたのです。
当時の特番インタビューやバラエティ番組において、ムック自身が「わたくし、完全にガチャピンのバーター(抱き合わせ出演)ですぞ」「おいしいところは全部緑色が持っていきますからね」と、ユーモアを交えて自虐的にぼやいたことが、いつしかネット上で文脈を切り離され、「確執」「不仲の決定的証拠」として一人歩きしてしまいました。
しかし、当時の番組制作スタッフや近年の現場関係者の証言を総合すると、真相は正反対です。過酷なロケに単身で挑むガチャピンの極限状態を、現場の誰よりも心配し精神的な防波堤となっていたのはムックであり、ガチャピンもまた「ムックが待っていてくれるから恐怖に打ち勝てる」と全幅の信頼を寄せていました。カメラの前で見せるムックのぼやきは、ガチャピンの超人ぶりを引き立てつつ自身も見せ場を作る、高度なプロフェッショナル同士のコンビ芸(阿吽の呼吸)だったというのが業界内の一致した見解です。