『耳をすませば』の作中序盤、雫が友人たちとふざけ合って披露するパロディソング「コンクリート・ロード」を覚えている方も多いはずです。
「コンクリート・ロード どこまでも 森をきり 谷をうめ 西東京 多摩の谷 僕らの街」
一見すると中学生らしいコミカルな替え歌ですが、ここには宮崎駿監督特有の鋭い都市文明批評が込められています。かつて里山だった多摩の自然が切り開かれ、巨大な人工都市へと姿を変えていった歴史を、子どもたちの目線からユーモラスかつアイロニカルに表現しています。「失われたふるさと」を前にして、それでもこのコンクリートの街で生き抜いていくという世代のリアリティが、この短いフレーズに凝縮されています。
また、原曲にまつわる意外な事実として、作詞を担当したビル・ダノフとタフィー・ナイバートは、制作当時ウェストバージニア州に行ったことがなかったというエピソードがあります。彼らが車を走らせていたのは実際にはメリーランド州の田舎道であり、語感の良さから「ウェストバージニア」という地名が選ばれました。名曲の誕生には、現実の地理を超えた「誰もが心に思い描く理想郷のイメージ」が作用していたのです。