「Excelの共同編集を使うとデータが勝手に消える」というネット上の噂は、半分が誤解であり、半分はシステムの基本原則を知らないことによる人為的ミスです。ここでは、編集競合の自動解消ルールと経緯を解き明かします。
Excelの共同編集エンジンは、複数ユーザーが全く異なるセルを編集している限り、それぞれの変更を極めてスムーズに統合します。AさんがセルA1を、BさんがセルB10を編集した場合、何の問題も発生しません。問題は「完全に同一のセル」をほぼ同時に書き換えた瞬間に起こります。
この場合、システムは「ミリ秒単位でサーバーに後から到達した書き込み」を正として採用するラスト・ライト・ウィン(Last-Write-Wins)のルールを機械的に適用します。先行して入力したユーザーのデータは即座に上書きされ、画面上にはエラーダイアログすら出ないことがあります。これが「データが勝手に消えた」と錯覚される真相です。
ただし、データが永久に失われたわけではありません。Microsoft 365の基盤には強固なバージョン履歴(バージョン管理)が組み込まれており、上書きされる前の状態はクラウド側に正確にアーカイブされています。「誰が、何時何分に、どのセルを書き換えたか」はバージョン履歴パネルから完全に可視化でき、ワンクリックで復元可能です。データが消滅したのではなく、「別のバージョンとして履歴に退避された」というのが技術的な実態です。